急性扁桃炎
原因
のどの両脇に見える口蓋扁桃が風邪の後に炎症を起すことがあります。細菌やウイルスに感染すると扁桃が赤く腫れ、時に表面に白い膿が付いて痛みます。高熱や全身倦怠感を伴うことも多く、重症例では痛みのあまり十分に食事が摂れなくなります。
このようにして治療します
細菌感染が疑われる場合は抗生物質の内服や点滴注射を行ないます。痛みに対しては鎮痛薬を使用します。 扁桃炎を年に3~4回以上繰り返す場合を「習慣性扁桃炎」と呼び、手術で扁桃を摘出することもあります。
よく「扁桃を取ると免疫力が下がるのでは?」という質問を受けますが、年齢を問わずそのような心配は全くありません。
留意点
扁桃炎の予防は十分な栄養・睡眠を取り、摂生に努めることに尽きます。うがいも有効です。喫煙は扁桃炎の回復を妨げます。過度の飲酒は避けましょう。
扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍
原因
急性扁桃炎が悪化して、扁桃の周囲に炎症が広がった状態が扁桃周囲炎です。更に重症化すると扁桃の皮膜が破れて周囲に膿が溜まり、扁桃周囲膿瘍という状態になります。
症状
口が開きにくくなり、非常に強い痛みのため、ものが飲み込めなくなります。時に気道が腫れ、呼吸困難を生じることがあります。
このように治療します
抗生物質の点滴注射が必要で、食事が摂れない場合は入院が必要です。扁桃周囲膿瘍に対しては注射器で膿を抜いたり、切開したりして膿を出す必要があります。
急性喉頭蓋炎
原因
喉頭の入口に蓋をするような、弁状の構造物が喉頭蓋です。風邪がひどくなり、喉頭蓋の周りに細菌が感染すると赤く腫れて強い痛みを生じるようになります。
症状と診断
痛みの他に、のどが詰まるような感じ、声がこもる、飲み込みにくくなる、といった症状がでます。炎症が急激に悪化すると腫れた喉頭蓋が気管の入口を塞いでしまい、呼吸困難が生じます。最悪の場合は窒息します。
このようにして治療します
耳鼻咽喉科で喉頭蓋炎と診断した場合は、抗生物質とステロイドを点滴注射します。腫れがひどい場合は入院が必要です。更に、窒息する危険があると判断した場合は気管切開を行なうこともあります。
喉頭蓋はのどの奥にあるので、口を開けてちょっと見ただけでは分かりません。のどの痛みの他に詰まるような感じがしたら要注意です。
声帯ポリープ
原因と診断
のどの炎症や、声の酷使、咳込みなどにより声帯の粘膜に微小な出血が起こります。この「血豆」が吸収されずに残るとポリープになると考えられています。片側の声帯にできることがほとんどです。主な症状は声のかすれ(嗄声)です。
声を酷使する方に多く、のどの粘膜が炎症を起している時に生じやすい傾向があります。内視鏡で声帯を観察すれば診断がつきます。
このように治療します
治療の基本は「声の衛生」です。 ① のどの健康について意識する(のどを冷やさない、乾燥させない) ② 声を使いすぎない(大声を出さない、長話を避ける) ③ 声の出し方に注意する(力んだときに声を出さない) 炎症を抑える薬やネブライザーも行ないますが、声の酷使を続けている限りは治りません。
この治療で治らない場合は手術によりポリープを切除します。通常は入院のうえ、全身麻酔下に行なわれます。
声帯結節
原因と診断
保育士や教師、歌手など、日常的に大きな声を出す人にみられます。発声時に両側の声帯が強く擦れることでイボ状の結節ができるため、声帯に隙間ができてかすれ声になります。 声帯ポリープと同様に内視鏡検査で診断します。
このように治療します
声帯ポリープと同様、治療の基本は「声の衛生」です。職業柄、どうしても声を出さずにはいられない場合もありますが、長時間話さない、マイクを使うなどの対処が必要です。
声の衛生のみで改善しない場合は手術により結節を切除しますが、声帯ポリープの手術と比べて技術的に難しく、手術後に声が良くなるまで数週間かかります。いったん治ってからも、声の酷使を繰り返すと結節が再発することがあります。
咽喉頭異常感症
原因
「のどがいがらっぽい」、「詰まる感じがする」、「異物感がある」等、のど違和感を訴える方が多くみられます。そのうち、検査を行なっても咽頭や喉頭に症状に見合う所見がないものを咽喉頭異常感症と呼びます。過度のストレスやうつ状態、心身症、自律神経失調症など精神科・心療内科領域の疾患と関連があると言われています。
のどの違和感を生じる疾患として、慢性の後鼻漏、アレルギー、逆流性食道炎、貧血、喉頭の形態異常などがあります。また咽頭や喉頭、食道のガンが原因のこともあり、内視鏡検査や食道造影などの精密検査が必要です。原因疾患の存在が明らかになれば、それぞれに応じた治療を行ないます。
このように治療します
どのような検査でも異常がなく、なおかつ違和感が消失しない場合は抗不安薬や漢方薬(半夏厚朴湯、柴朴湯)を処方することがあります。 内視鏡検査を受けてガンがないかどうかしっかり確認することが重要です。
ただし、検査で異常がなければ「違和感があるのだから病気があるに違いない」と思い込まないことです。「検査を受けて異常がなかったから大丈夫」という気の持ちようだけで症状が改善することは多いのです。